Case 5: 医療

医療用超音波診断装置に応用
動かしやすく、鮮明な画像投影を実現したケーブル

「これが赤ちゃんの足で、これが手ですね。順調に育っていますね。」
妊婦検診や健康診断では、超音波診断装置(エコー)を用いて体内の様子を画像で見られる。さらに、痛みや放射線被爆をもたらすことなく、超音波によって体内の状態を安全に調べることができる。

医師が手にする「振動子センサ」から送られる超音波信号を「装置」自体に伝送する「ケーブル」。
潤工社は、30年以上にもわたり医療用診断装置用ケーブルを提供しており、その先駆者的存在である。

繰り返される試作

開発当初に求められたのは、「とにかく鮮明な画像が見られるようにしてほしい」「ケーブル自体を強く、細く柔らかくしてほしい」ということ。
体内の様子を鮮明に映し出すには、高密度な信号伝送が不可欠だ。時として患者様の命にもつながる診断をするため、ケーブルの信頼性が高いことが必須である。さらに、センサは体に這わせて、回転・往復させながら動かす。医師や技師の負担が軽くなるよう、細く柔らかく、それでいて繰返しの曲げに強いケーブルが求められる。

これらの条件を達成するために、潤工社の果敢な挑戦が始まった。
細く、強いケーブルを目指し、潤工社が得意とするフッ素ポリマーを誘電体に使用したケーブルを応用。
画像をより鮮明に映し出すために、低静電容量のケーブル設計を開始した。フッ素ポリマーは誘電率が最も小さい素材ではあるが、さらに誘電体の厚みを極限まで薄くする、誘電体に空孔構造を形成する、シールド技術の品質を安定化させる、といった数々の技術を投入し、試作を繰り返した。それにより、装置に適した極細同軸ケーブルの設計が可能となった。
ケーブルの撚り方にも独自の工夫を施し、柔軟性を追求しながら、極細同軸ケーブルを100本以上撚り合わせた。そのうちのたった1本でも切れると正確な画像伝送ができないため、同時に強度も持たせた。

チームワークで高まる技術

担当のエンジニアたちは当時を振り返る。納得がいくまで試作を繰り返し、4種類のサンプルを数日で仕上げた。その対応の早さにお客様が驚くくらいであった。生産にあたっては、工程が複雑なため、綿密な生産計画を立てて全社的な協力体制を敷いた。潤工社ならではのチームワークを発揮した出来事であった。

最初に開発したケーブルの太さは“AWG#32”、導体径は0.24 mm。その後、30年にわたり改良を重ね、現在は、“AWG#50”、導体径は0.025mm、髪の毛ほどの太さの細径化ケーブルを量産化している。

医療用の極細同軸ケーブルは、潤工社の技術の結晶である。画像精度の要求も年々高くなっており、医療分野の発展を支える潤工社の果敢な挑戦は続いている。今後も安心・安全を運ぶ高精密なケーブルを世界中のお客様に提案し、人々のQOL(生活の質)の向上を目指していく。

※掲載の写真は取材当時のものです。

30年以上にもわたり
医療用診断装置用ケーブルを提供する
先駆者的存在