Case 3: IT

世界に誇るスーパーコンピュータ「京」を支えた
高速信号伝送ケーブル

潤工社のコンピュータ用ワイヤ・ケーブル開発。
その歴史は40年を超え、光伝送速度の95%を実現したEPTFE誘電体によって、大容量高速デジタル伝送に欠かせない低スキュー・低ロスを実現してきた。

そんな長い歴史の中で、あるお客様から、国家プロジェクトに協力してもらえないかとお声がかかったことがある。その要求内容は、品質・性能・供給能力において、世界のどの企業も不可能と思われるものであった。
しかし、潤工社は、これまでに積み上げてきた技術と経験を活かし、あえてチャレンジすることを決断した。

そのプロジェクトとは、文部科学省の指導の下、理化学研究所が中心となって開発をおこなっていたスーパーコンピュータ「京」であった。

要求仕様を全てクリア

スーパーコンピュータ製作会社は、試算段階において、1,000万mを超えるケーブルが必要と算出。
その膨大な量から、当初は複数ベンダーからの供給が想定されたが、最終的に要求仕様の全てを満たせるのは潤工社1社のみと判断された。
中でもペア内スキュー(ツイスト線ペア内の時間差)については20ps以内と、一般的ケーブルの5分の1もの高水準が求められた。さらにリターンロスやビットレートの向上も課題であった。

担当者は毎週のようにスーパーコンピュータ製作会社のオフィスに通い、念入りに試作品の打ち合わせを重ねた。

その結果、20ps以内のペア内スキュー、8対から16対への多芯化という、難易度の高い要求仕様を全てクリアした。

技術とノウハウの結晶

しかし、大きな壁が立ちはだかった。前例のない月産9万mの生産が必要となったのである。
これに対応するため、初期段階から製造も入った全社的なプロジェクトを編成。さらにケーブル専用製造設備を設けて、スキル認定された専任のオペレータだけがラインに従事した。
関わるメンバーは全員同じフロアに集結し、全工程をシームレスに結んで生産プロセスの連携と時間効率性を極限まで高めた。毎朝、各工程のリーダー総勢20名近くが集まり、課題を共有して予兆管理を徹底。各工程で問題が発生した場合も、関係者が即座に集まって問題解決にあたる。そのような品質管理に心血が注がれた。

最終的に、総距離3,500万mにもおよぶ高速伝送用ケーブルを納期遅れなく納入するという果敢な挑戦を成し遂げた。
さらに、「2011年の納入開始から2019年8月の終了に至るまで、ハードに起因するトラブルはゼロ」という誇るべき結果となり、エンドユーザーである理化学研究所、およびスーパーコンピュータ製作会社から高い評価を受けた。

日本の威信をかけた国家プロジェクト。その性能と「京」による科学的シミュレーションを、潤工社の技術とノウハウの結晶である大容量信号伝送ケーブル技術が支えたことは間違いない。

※掲載の写真は取材当時のものです。

不可能にも果敢に挑戦する
潤工社の技術とノウハウが
国家プロジェクトをも支える